お知らせ

こちらは、2007年に明治大学の社内広報誌 M STYLEに連載した「MESSAGES FROM HARVARD」からの再掲になります。

自分で決める勇気

辛い物が苦手な少年がいたとしよう。彼は、周りの人々が「カレーがおいしいよ」というので素直に一生カレーばかり食べ続けた。そんな彼が年老いて死ぬ前に、「別にカレーは好きじゃなかったな」と思ったとしたら、あなたは彼をバカだと思うだろうか。

では、小さなパン屋を開くのが夢だという少年がいたとしよう。彼は、親や教師が、「いい大学に行き、有名企業に入れ」というので素直にそれに従った。入社後は会社や上司が「いい評価を取れ」というので一生懸命働いた。彼は有名なビジネスマンになり、多くの人に称えられるようになった。そんな彼が年老いて死ぬ前に、「なんだか幸せな人生ではなかった気がする」と思っていたとしたら、あなたは彼をバカだと思うだろうか。

他人の価値観に従って生きたのに幸せになれなかった・・・。そんな彼らを一概にバカだと批判することは難しい。周りが決めた幸せというのは正しそうに聞こえるし、重要なことを他人に決めてもらえる安堵感や人に褒められる喜びに抵抗するのは、かなりの自信と勇気が必要なことなのだ。「自分の市場価値を上げたい」という社会人がかなり多いのも、お金という他人にわかりやすい指標で評価してもらうと、「自分には価値がある」と安心できるからだろう。

しかし、人によって同じ食べ物の味をどう感じるかが他人と絶対に違うのと同様に、最終的にはどんな人生が幸せ化は絶対に自分にしかわからない。だから、幸せな仕事をするためには、自分が選ぶ仕事の価値を自分で定義し、人生を自らコントロールすることが大切だと思う。

では、小さなパン屋になりたかった少年は、どうすればよかったのだろうか。単純に、周りに何を言われようと胸を張ってパン屋を開き、お金の代わりに「焼きたてのパンを受け取って喜ぶお客さんの笑顔」で自分を評価する勇気があればよかったのではないか。

あなただけが、あなたを幸せにできる。そして、あなたのあなたらしさは、ものすごーく、素晴らしいものなのだ。だから、そろそろ「他人の決める幸せ」という誘惑から自立して、自分を信じて歩んでいく勇気を育てていこう。