日本のイノベーションの課題

先日、今年最後のクレイトン・クリステンセン先生の授業に出たあとに、クリステンセン先生と日本のイノベーションについて話をした。

その時先生は、オフィスの引き出しをあけて資料を取り出し、コピーして渡してくれた。

「Yo、これを読みなさい。私の古い論文だけど、構造上のほとんどはまだ当てはっているから」と言って。The Great Disruptionという記事で、確かに2001年ということで古い記事ではあるが、日本の輝かしい破壊的イノベーションが、今では破壊される側になってしまった事についてまとめられている。

確かに、日本はアメリカおよびヨーロッパのビジネスモデルをことごとく破壊した。アメリカは窮地に立たされたが、その後破壊的イノベーションを継続的に生み出し続けるベンチャー育成のシステムを作り上げることに成功した。中心を担ったのがベンチャーキャピタルであり、ベンチャーキャピタルはリスクを取った投資と経営支援により破壊的イノベーションを先導し、世界的な企業を次々と作るという構造を作り上げた。

一方で、日本は一度破壊的イノベーションにより大企業を作り上げたものの、この流れは一度で終わってしまったのだ。その日本らしい要因を、先生は以下のようにまとめている。

これはまさにその通りであると思う。

アメリカのベンチャーキャピタルで働く者としては、日本での投資の大きな壁は雇用の流動性である。要するに、頭のよろしい皆さんは、人気ランキングに合わせて上から高校を受け、人気ランキングに合わせて上から大学を受け、人気ランキングに合わせて上から就職先を受けて、入ったらそのまま動くことはない。つぶれるリスクがあるようなベンチャーには降臨してこず、大企業の大ビジネスに貢献するイノベーションの研究をせっせとしており、自社の事業を破壊しようなんてことはしないのである。

アメリカのベンチャーの経営陣というのは日本のベンチャーから見たら目玉が飛び出るぐらいスーパースターぞろいであるが、これは事業に失敗しても次の仕事が見つかるからであって、労働市場の流動性の低い日本のベンチャーがそこまで優秀な人材を集めるのはかなり至難の業というかまあ無理である。経営陣のレベルが全般的に低いため、ベンチャーキャピタル産業が育たなくなってしまった。日本にもベンチャーキャピタルが存在することは存在するが、アメリカのように経営のプロがリスクを評価して投資を行い、取締役として社長を指導しながら成功に導く・・・なんてことができるベンチャーキャピタルは皆無である。

クリステンセン先生は、政府の主導でイノベーションを起こすなんて事は無理だと思っていて、それよりアメリカ式のベンチャーキャピタル投資が主導的に産業を変えていく事が現実的だと説いている。アメリカの大手ベンチャーキャピタルとして日本で投資を行っているのはうちとDCMぐらいしかないが、グロービスやアント・キャピタルのように本格的な経営支援ができる日本のベンチャーキャピタルも出てきている・・・まだまだ数が少なすぎるが。日本のベンチャーキャピタル産業を作り変えなければならない・・・というメッセージかもね。

2 replies
  1. globetrotter
    globetrotter says:

    クリステンセン先生のニュース、聞きました。私のセクションにも最後の授業のビデオが流れてきました。期末が終わったら見てみようと思います。

    今度Yokichiさんと日本の課題について色々と語り合いたいです。

    よい年末を!!

    Reply

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