たった1年で5100万の雇用を生み出すアメリカの雇用流動性

最近までシリコンバレーに住んでいたが、去年の今頃のシリコンバレーでのレイオフの勢いは凄かった。友人、近所の人、セミナーで会う人・・・とにかく会う人の多くが求職中で、「最近どうですか?」「いやー、今レイオフされて仕事探してるんですよ」なんて会話が当然のように飛び交っていた。

当時は「世も末だ」と思ったものだが、そんな皆さんの一年後の現状を見てみると、今ではほぼ全員が新しい職場で働いている。こういう状況を見ると、アメリカの雇用の流動性はすごいなあと思う。そんな事を思っているところ、僕が尊敬する数少ない(本当に少ない!)経営者の一人であるトム・ピーターズのブログにこの流動性を裏付ける数字が書いてあった。

アメリカの2008年9月から2009年9月の12ヶ月の雇用状況の話だが、この間に、無職の人口が600万人増加した。ここですごいのは、5700万の職が失われ5100万の新たな雇用が発生した結果が600万人であるということ。すさまじい再雇用の勢いであり、どうりでクビになった友人たちはわりと能天気なわけだ。たった12ヶ月の間に、9人が仕事を失いそのうち8人が仕事を見つけるというプロセスを600万回繰り返してこうなったということ。

日本政府がつぶれかけの大型業界の雇用を守るために補助金を投入し延命措置を行い、銀行がやらせることの無いバブル世代の高給取りを守り、労働組合が半死状態の航空会社にトドメをさし、解雇された人が「私は前と同じ業界じゃなきゃ働かない介護の仕事なんてしたくない」と言い、「派遣村」に押し寄せた人々が職を探す時間を惜しんでキレている間に、アメリカでは僕達の目の前で今もすさまじい勢いで雇用能力・競争力のある会社や産業に労働力がシフトしている。長期的にはこの新陳代謝の高さがアメリカの回復力に大きく影響するだろう。

こういう違いを目の当たりにして生活していると、日本もそろそろドロドロになった血液をなんとかしないとポックリいってしまうのではと心配になります。

3 replies
  1. 島崎丈太
    島崎丈太 says:

    確かにアメリカの雇用状況はダイナミックですが、多分、新しく生み出された職の平均給与は無くなった職の平均給与より少し低めなのではないでしょうか? 600万の職が減ったということは、競争率が相当高まったということですよね? しかし確かに「長期的にはこの新陳代謝の高さがアメリカの回復力に大きく影響するだろう」には同感です。
    日本の場合、伝統的な上場会社からリストラされて新しい職場に移ると、給与の下がり方(生涯賃金の減少)が非常に大きいので、どうしてもしがみつきたくなるのでしょう。 大学新卒でも内定率6割強、なんていう昨今の状況を見ていると、雇用分野にこそ政府が何らかの指導力を発揮して貰いたいです。
    池田信夫さん辺りが似たようなことを繰り返しブログで主張しておられますが、具体的に既得権者を既得権からどうやってひっぺがして流動性を高めるのか、は極めて難しい問題かと。 今日(2009/11/27)辺りの強烈な円高等で経済が一度徹底的に壊れる必要があるのかも知れない、と思ったりもします。

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  2. yokichi
    yokichi says:

    島崎さん、

    平均給与は仰るとおり経済の影響を受けて全体の平均給与は下がっていると思いますが、僕が個人的に知る限りは上がっている人もけっこういますし、同じ仕事をしている人が転職したかどうかで給与が変わることはあまり聞いた事はありません。

    日本で転職した人だけ給料が下がって転職していない人の給料が維持されるという奇妙な事が発生するのは解雇規制が激しいからですよね。解雇規制が激しいと、「実力-その人を解雇できないリスクのコスト-その人とは関係ない、すでに雇ってしまったが解雇できない人のコスト=転職後の最初の給与」になるので、最初の給与が下がります。

    が、解雇規制がゆるいAt Will(会社および本人の意思で即雇用契約の中止ができる状態)だと、「実力=転職後の最初の給与」に近くなります。実力が同じなのに社内で給与が違えば安いほうの人はすぐによそに行ってしまうか引き抜かれてしまいますし、採用にはかなりコストがかかるので採用した人が不満になるような条件を提示してすぐ転職されると企業側には大きなダメージですので、At Willの条件ではあまり転職後の給料を下げられないと思います。

    僕は政府には期待するのは個人的に嫌いなのですが雇用に関してだけは制度を企業側にゆだね、政府は規制などせずに放置してほしいと思っています。

    前回の日記のコメントへの返事にも書きましたが、日本をよくするには「若者の危機感をあおって将来の負債のために割りをくいまくる予定の若者がキレて革命を起こすようにするか、優秀な人がみんな海外に早く出て行って日本を一旦つぶすかぐらいしかできることがありません(日本では、「日本はもう駄目だ」という考えが「主流」になり「誰でも同意する事実」になった時点で、すごい力で立ち直るパワーがありますが、そこまで到達する方法が難しい)。」と思っているので、日本を早めに駄目にできれば立ち直るチャンスがあるかもしれないと思っています。

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  3. 黒柳一夫
    黒柳一夫 says:

    あなたの意見はまったく正しいです。同感、でもあなたのしめは
    ”心配になります”だけですから よくなるための提示が必要だと私は
    感じる。そこをもっとあなたから聞きたいです。あなたのブログはとていいです。

    私の提示はー日本人の意識を変えること、政府ではない。おのおの個人意識です。資本主義はすでに崩壊しているが、表面的には一様資本主義ですが、売買もなんら変わりません。日本人がもっともっとプロ意識を持つ。自分以外はすべて敵であるくらいが一番いいと思いますー日本人にはまず理解できないでしょう今は。理解される必要はないですがー私は私の意見を述べているだけですから。私は相手を敵だとまだ思えないです。アメリカですし屋経営以外の商売をしたらたぶんわかるのではないかと思います。すし屋の敵にアメリカ人はいないです。
    日本人は早く正社員という概念から離れること。解雇規制など早くやめること。あなたも同感であるはずです。日本は競争力がないので、雇用流動性の低さはあまりにもひどすぎる。日本のデフレギャップ7%現在ーこれにより日本は最悪状態に必ずなります。輸出はままいけると思います。他国はデフレなしですから。
    黒柳一夫、59歳 
    中古車輸出業。

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