アメリカでの就職の話 (4): ついに家も失った
失敗の準備を整える
最初の頃は、さすがの僕も食欲が減った。朝起きると、あ~、これ全部夢だったらいいのになぁ、と思ったり。
今まで、経営コンサルタントとして、業務効率化の仕事もしたことがあるが、少なくともHBSを卒業して一瞬で自分が切られる側になるとは想像もしていなかった。レイオフされる痛み、明日行く会社があるということの有難さ、給料が口座に振り込まれるという事の有難さなど、今まで全くわかっていなかった。でも、こういうのって、とっても大事な感覚だと思うし、きっとプラスになる日が来る。
グダグダしていてもしょうがないので、今後のことについて考えた。しばらくしたら、考えれば考えるほど、大した問題ではないように思えてきた。ビザがあるうちに仕事が見つからなかったら僕の力不足なんだから、日本に帰ればいいじゃないか。別に今すぐアメリカでテクノロジーのベンチャーの仕事が見つからなくても、そのうちどうにでもなるでしょ。健康保険は、カリフォルニア州が失業者に提供する割高の保険を全額自分で払えばとりあえず何とかなるじゃないか。借金なんて、人の2倍以上働けばいつか返せるじゃないか。どれも、大した問題ではない。生まれたばかりの息子はかわいいし、奥さん元気だし、みんな健康だし。それに、この不況下でレイオフとかいうのはいい話のネタになるし、このピンチを切り抜けたら自信がつくに違いない。
僕は、まず、色々な弁護士と会い、移民法についてのリサーチをかなり綿密に行い、いきなり完全レイオフになった時に就労ビザを観光ビザに切り替えられるように、全ての書類を整え、サインし、封をし、あとは全部失敗したら書類をポストに投函できるだけにした。ヨーシ、失敗の準備は整った。あとは、失敗しない時にのために努力するのみ!
就職活動がこれまた楽しい
この不況下では、アメリカ人でも再就職に半年かかるみたいな話を聞いていたので、自分の場合はもっと苦戦するかもしれない、ということで、まずは動くより先に、人に相談してみることにした。
シリコンバレーにいる人は、アメリカ人も日本人もカッコいい人が多いので、そういう皆様に相談をして回っているだけでも最高に面白かった。どハマりしている僕の状況を聞いて、とにかく素晴らしい人たちが、親切にも貴重な時間を僕のためにさいてくれた。こういう貴重な経験ができるのも、この大不況のおかげ・・・。毎日が成長を実感する素晴らしい日々だった。それに、こういうピンチになると、家族、友達、知り合い、会社の仲間、多くの人が支えてくれる。こういう人たちがそばにいる事ほど、幸福なことはないと、日々感謝。
ところで、「なんだかあまり面白いベンチャーはないんですよ・・・」なんて相談に、いつもとても親身に乗ってくれていたのが、他でもないGlobespan Capital Partnersのみなさんで、事あるごとにいろんな人を紹介してくれていた。Globespanは僕のオフィスから徒歩3分ぐらいの超近所にある、アメリカでけっこう有名なベンチャーキャピタルで、シリコンバレーに二人しかいないHBSの日本人の先輩のうちの一人がいらしたので、よく遊びに行っていたのだ。
僕はベンチャーキャピタルで働く気はなかったので全く自分を売り込んでいなかったのだが、相談しているうちに、いきなり「うちのボストンオフィス、受けてみる?」と言われた。よく話を聞くと、投資先のテクノロジーベンチャーの世界展開という、まさに僕がやりたいと思っていた仕事だった。こんな面白そうなことをやっているベンチャーキャピタルがあるとは。とはいえ、ベンチャーキャピタル業界はかなり苦しい状態にあり、どこも縮小モードであるとは知っていたので、そんな時にこんないいところに入れるなどとは期待していなかった。ちょくちょく面接しにGlobespanに行きつつも、他の活動も進めていた。その後、Globespanからは結果の連絡がなかなか来ず、やっぱり無理でしょ、と思って、引き続きテクノロジーベンチャーと話をしていた。相変わらずscanRでの仕事は続いており、色々マーケティング調査を行っていた。
ついに住む場所も失った
就職活動を開始して3ヶ月ほどたった4月の頭、とある金曜日の午後、大家さんから電話があった。
「不景気でアパートに人が入らないから家を改築することにしたので、30日以内に出て行ってくれ」
・・・ハ?
カリフォルニア州の法律を調べると、大家は理由を問わず住人を追い出してOKということになっていた。うーむ、さすがリベラルな州カリフォルニア!
どうやら冗談ではないようなので、ついに住む場所もなくなることが決定。
やっぱり、家というのはとても大事。仕事先が見つからないのに次の引越し先なんてわからないわけで、30日以内に満足のいく引越し先を見つけて全部荷物を引っ越すなんてかなり難しいわけで、引越しにもかなりのお金がかかるわけで、家族にも大きな負担がかかるわけで。さすがにここまでピンチになったら、これはタイミング的にここで帰れってことでしょう、と思った。そして、帰る準備のためにビザの手続きの準備を始めた。
なんとなく、今後の展開を予想していたのですが、住居を失うとは予想しておりませんでした。私も首を切られた経験はありますが、これはきつい。
CAで大屋やっています。
入居時には、一般的には年間契約をしているはずです。1年過ぎると、改めて年間契約をするか、何もしなければMonth to Month の契約に移行したと見なされます。
Month to Month であれば、大屋の都合でも30日以内にテナントは退去しなければなりません。
年間契約をしている場合、契約期間中はテナントはそこに住む権利があります。通常は、引っ越し代+アルファをテナントに払って、合意の上で出ていってもらいます。
1年と少し経っているようですので、Month to Month なんでしょうかね。今の時期、アパートは空き家が多く、借りて市場ですので、引越しも視野に入れてはと思います。
[ホームレス]という単語の意味合いが日本よりは軽いのでは?
とは思います。
日本だと一度「住所不定」がついてしまうと、まともな市民サービスも
受けられないし、カタギの職探しもできなくなりますしね。
> 今日も帰宅後読みました さん
すみません更新が遅れています、となぜか謝る私。
> Hidekiさん
うちの場合は6ヶ月後のMtoMで、すでに切れてました・・・。もう引っ越したので大丈夫なのですけど。
>T.muraさん
うーんどうなんでしょうね。いちおう僕が知っている限りでは、引っ越したら30日以内に報告することになっています。僕のビザだと、住所不定は許されなかったと思います。