日本を離れてはや3年
ちょうど、日本を離れて3年が過ぎた。3年前から今日まで、日本にいたのはごくわずか。3年前までずっと日本で生きてきたのに、急に日本に帰らなくなって3年もすると、不思議なことに色々な意味で日本の生活がすごく遠のいてしまって、とても非現実的な世界に思えてくる。
- 朝起きて、テレビをつけたら、元気なアナウンサーの女性が日本語で、東京の天気を摂氏で説明する。家を出て大通りを歩くと、コンビニがところ狭しと並んでいて、ごみの日には道端にごみ袋が積みあがっている。大通りでも小さな八百屋があって、店の前には古ぼけた冷凍庫があって、ガリガリ君とかピノみたいなおいしい、小さいアイスがならんでいる。ドラッグストアには手書きで「特価」と書いたおよそ薬と関係ないものが並ぶ。壁、電信柱、看板、とにかくあらゆるところに文字が書いてある。空は建物と電線で埋まっていて見渡すことはできなくて、青空のはずのときでも白くもやがかかっている。道路には人が双方通行できっちり分かれており、身なりはきちんとした人たちが早足で歩いたり、銀行でお金を下ろすために列に並んだり、ぱっと方向を変えてコンビニに向かったり。
- 電車に入ると、教育に悪そうな中吊り広告と、英語学校の宣伝に埋め尽くされていて、周りを見渡すと黒一色の髪の海が見える。窓の外を見ると、線路沿いにならぶ木造とトタンでできた古ぼけた家屋の外にはよく洗濯物が干されている。
- 夜の細い道の街頭、お茶が並んだ自動販売機とその光に集まる虫。レストランに入ると、知らない人に話しかけてはいけないので、一人の人はみんな黙っている。コンビニには異常なまでに立ち読みしている人が並んでおり、外には学生がたむろしている。裏道に入ると、リスが走る姿はなく、かわりに?猫とカエルがいっぱいいて、民家の網戸の向こうには手に届くぐらいの距離に、居間でTシャツでおじさんがねっころがってテレビを見ている姿が見える。空を見上げると、やっぱり星はほとんど見えないんだけど、夜でも空が青く見えて、白い雲が浮かんでいるのがはっきり見える。なんだか、切ない日本のにおいがする。日本のテレビとか、風鈴とか、日本の音がする。
- 家に帰ると、日本らしい小さな食器にのった日本らしい食事がでてきて、麦茶がでてくる。テレビをつけると日本語の番組が流れる。ごはんを食べたら、お風呂に肩までつかることができる。湯船を出たら、湯船の外でシャワーを使って体や頭を洗うことができる。お風呂から出て、部屋のカーテンを開けると、目の前には隣の家の壁がすぐそこに見える。ベッドに乗って、携帯電話を開くと日本の友達の名前が並んでいて、電話すると、「もしもし」と聞こえてくる。
日本のみんなは、こんな夢みたいな生活をしているんだよなあ、うらやましいなあ、と思う。本当に、全てが非現実的な、映画の中の世界のように感じられてくる。
いざ日本に戻ったら、きっと僕はたった3年の間に、僕のしらないところで起こった変化に、きっと色々と驚くんだろうし、たった3年の間に僕自身がどう日本的にズレてしまったのかも心配。どういう気分かというと、こんな感じ。ひたすら前だけ見て山の絶壁を登ってきたら、地面が遠くて振り返ると怖くなる、怖いけど地表の村に戻ったら安心して休めるだろうと思う、でもこの山を越えずには帰れないからやっぱり登り続ける・・・みたいな。
ちなみに、この山、どこに続いているのか、全然わかんない。頂上が本当にあるのか、向こう側はどうなっているのか、僕は地表(日本)に戻る日が来るのか。日本に住みたくなったら住むし、アメリカが嫌になったらヨーロッパかどこかに行くのかもね。気が向いたふうに生きると思う。
高校を出たとき、英語もできないくせに、「僕は世界のどこでもやりたい仕事ができるようになれるだろうか?」と思った。当時はその考え自体が非現実的だったが、実験している間に現実と非現実が逆転してしまい、日本の世界が非現実的になってしまったねえ。といっても、まだまだ思ったよりはるかに大変だということがよーくわかったので、これからも大変だ。だけど面白そうなので、もう少し色々やってみようと思う。
でもやっぱり、そろそろ日本が恋しいなぁ~。
ははは。海外に住んでると、夢のようだよね。
僕がイギリスに居た1992-1996年は、インターネットは大学のコンピューターセンターでしか接続できなかったから日本の情報もなかなか入らなかったし、その頃ロンドンにあったヤオハンでは、日本の食材も雑誌も高くてなかなか手が出なかったので、本当に恋しくなりました。
でも、僕が帰国したときは恋しさで帰ったのではなく、帰る意義が見えたから帰ったので、古賀君の場合も帰る必然性が見えたら帰るんだろうねえ。読む限りでは、まだまだ先そうですな。Enjoy!
コメントありがとうございますうー。確かにまだ先かもしれませんねえ。上っても上っても、頂上が全っ然みえないんですよね・・・。
でも恋しさをまぎらわすために、ちょっと休暇をとって日本に帰ろうかな?
5年ほど前に5年ぶりに日本に帰った時のことだけど、山手線の座席が折りたたみ式になっていたり、新幹線が品川から乗れたり、公衆電話が全然なくてやっと見つけたものは全然使われてなかったものらしく異臭がしたり、なぜみんながマスクをしているのか解らなかったので何だか怖くなったり、と飛行機から降りて2,3時間の間に驚く事が沢山あって、他人から見たらもの凄く間抜けな顔をしていたと思う。まあ東京なので誰も見てなかったと思うけど。あれは凄いカルチャーショックだったなあ。
「日本の独特な空気」って海外生活していると、とっても恋しくなるよね。
そうだよねぇ、5年ぶりだったりすると、もう完全にアウェーゲームだろうね。
日本の独特な空気は本当に恋しくなるね。きっと、故郷を離れて別の都市に住んでいる人も似たような感覚なんだろうけど、なにぶんもっと遠いし言葉も文化も違うから、日本のよさがなおのこと懐かしくなるね。
アメリカに住んで5年半経ってから日本に帰ってきて、書かれたことをそのまま体験しております。帰ってきてから2週間経ちましたが、未だに日本がアウェーで、アメリカがホームのような感じです。買い物のときはドルに換算したり、「あ、これ、Whole Foods で買った方が安いから今買わない方がいいや」なんて思ったりしてます。
まあまだ就職先が決まっていないせいか、はたまた日本に帰ってきてから間もないからか、何となく落ち着かない生活を送っております。
もっちーさん
ドルに換算しちゃうんですか!ぼくはまだその領域には達していませんが・・・でも、細かいものは、日本での値段を覚えていないものもあるので、そういうものを買ったときとかはドルと比べちゃいそうです。
就職先決まっていないんですね。でもそれだけの海外経験があれば、仕事を探すことは難しくないでしょう。がんばってください!