たった25ドルの保育器 と Global Mind

うちの奥さんの友達(Harvard MPA / Stanford MBA)のジェーンちゃん (Jane Chen) が現在、Embrace Global という未熟児用の簡易保育器のNPOベンチャーのCEOとして、事業立ち上げをがんばっています。うちの奥さんもボランティアとして活動をサポートすることになりました。

途上国では毎年2000万人の子供が未熟児として産まれるそうです。金のない国で未熟児が産まれると、残念ながらかなりの数の赤ちゃんがそのまま死んでしまうそうで、その数は一時間あたり450人だとか。自分で体温を保てない赤ちゃんを一定の温度で暖めるのには保育器が必要ですが、医療用の保育器は200万円程度するので、貧しい村の病院などではとても手に入りませんし、電気もないのでたとえ保育器があっても使えないそうです。運よく生き残っても、糖尿病や心臓・知能の障害を背負うことが多いそうです。

そこで、JaneがたちあげたEmbrace Globalは、たった25ドル(2500円)で作れる、電力不要の簡易保育器を開発しています。4時間おきにお湯をわかして寝袋のようなものに入れるだけで、温度を保つ性質があるジェルが赤ちゃんの体を37℃で暖めてくれます。もちろん、200万円の保育器に比べたら機能ははるかに劣るのだと思いますが、与えられた選択肢が「何もできない」である状況において、赤ちゃんの命を救うチャンスが少しでも増えるならば母さんは喜んで使うのではないでしょうか?

Janeは今、この不景気の逆風の中で資金調達をがんばっています。まずは問題が深刻なインドから始めるとか。僕たち夫婦も、うまくいくといいなと思っています。

こういう途上国では安い簡易保育器を開発する技術力すらないので、自分でなんとかできないと思います。一方で、先進国は電気もちゃんとした保育器もあるので周りでは困っておらず、がんばって開発する動機も産まれません。その結果、途上国で苦しむ人のことを理解できる、Global Mindをもった先進国の人がいない限り、状況は変わりません。

ところが、先進国で恵まれた暮らしをしていると、途上国で毎時間450人が死んでいると言われても、なかなかピンとこなくなるのが辛いところです。このような途上国の親も僕たちと全く変わらない普通の親であり、1人の赤ちゃんを失ったときの悲しみも同じように大きいに決まっているのですが、普通に生活していると自分の周りしか見えなくなるので、自分と直接関わらない悲しみが数字以上の意味をなくし、非現実的なおとぎ話に聞こえてしまいます。

だから、Janeの話を聞くと、僕はいつも反省します。同じように莫大な投資をして教育を受け、これから借金を返していかなければならない同じ状況なのにケロっとして世界の子供のためにがんばりたいというJaneをみると、「そうはいっても自分には借金もあるし」「家庭もあるし」と言い訳をしそうになる自分を恥ずかしいと思います。途上国の人の気持ちを理解できないふりをして、先進国に生まれたという単なる幸運を当たり前のように思い、先進国に産まれた自分が途上国に貢献する力を過小評価してやり過ごそうとしている、ちいさい自分を目の当たりに感じさせられてハッとするからです。

「自分が今、貧しい国に生まれて親となっていたら、どうしているだろうか。学校がなくても、子供が大きくなった時にいつか本を読ませてあげられるように、レンガや
木を組み立てて、図書館を作っているだろうか。図書館を作ったら、いつか本を贈ってくれる人や、本を置いていってくれる旅行者がいるかもしれないから。」そういう具体的なことを時々考えないと、ハートが硬くなって自分が先進国の人間である以前に単なる人間であるという感覚を失いそうになります。

こうした途上国の状況を改善するために、HBSの優秀な日本人同級生2人が、超エリートキャリアを経てワシントンDCの世界銀行グループの国際金融公社(IFC)に入り、途上国向けの開発投資をしています。途上国の問題を解決していくにはもっともLong Termで本質的な効果がある方法だと思います。彼らに比べたら僕の力など微々たるものではあると思いますが、彼らのGlobal Mindを見習って、僕も少しは世界に貢献していかなければと思います。

そんなわけでEmbraceの話に戻ります。現在Janeがサポートを必要としている領域は以下のとおりです。たぶん実際に製造体制を確立し、従業員を持てるようにるには資金が必要になるので、特に資金調達が重要になると思いますが、そのほかの領域でもサポートを必要としています。

個人での寄付 →こちらから

資金提供ができるファンドの方 →comments@embraceglobal.org に。

コネクションをお持ちの方 →comments@embraceglobal.org に。

  • 途上国での商品流通をサポートできるNGO
  • 途上国の政府へのコネクション
  • 途上国で医療商品を流通させている医療製品販売企業
  • インド・中国・アメリカの製造業者

これからもわが家はEmbraceを応援いたします!みなさんももしよかったら寄付してくださいね。

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