正月西日本一周青春18切符極貧の旅: Day 3

友人と成人式

寒いので頭から布団をかぶって寝ていた。

やせているから寒さに弱いのだとしても、部屋の中なのに息が白くなるのだから、僕でなくても寒いだろう。 九州までくれば少しは暖かいかなと思ったが、かえって寒い。ちっ、甘かったか。

とにかく、友人とその母親が今日の成人式の事を話しているのが聞こえる。そうなのだ。今日、僕の友人は成人式なのだ。今日は5日だけれど、こういった田舎町では日程を大幅にずらす事もあるようだ。そういうわけで、昨日飲みすぎた彼は そのまま成人式に行くので、僕は家に取り残される事になるようだ。その事について彼とおばさんが外で話しているが、僕は眠いので顔を出さなかった。眠い目をこすって東京から来た古賀ですというのなら、きっちり起きてから自己紹介をしようと思い、また眠った。 

ご両親


10時ですというラジオの音で目覚めた。

僕は今に行き、おばさんに自己紹介した。おばさんはあたたかいひとであった。 ご飯になさいますか、お風呂になさいますかと言うので、寒かった僕はではお風呂を頂きますと答えた。いつもついていない炬燵の上には手巻き寿司が乗っていた。遅くにお客さんがいらっしゃるのでこんなに作っておいたんですと笑うので、とっても申し訳無かった。

状況を確認すると、肝心の友人は成人式に行ってしまうというシチュエーションにつき、僕は一日彼の家ですごすことになった。彼は式のあとに一度帰ってすぐ着替えた
ら、みんなで遊びに出かけるそうだ。となると、今夜遅くに帰ってくるわけで、明日朝早い僕と彼は全然会わない事になるのだった。本当にただの居候と化している僕であるが、彼の家族に迷惑をかけないようにしなければならないと思った。いい子にします。

そこへおじさんが帰って来た。

おじさんはこの山田町役場の福祉課に勤めているそうだ。 ほとんどの仕事が人助けなので、やり甲斐があるという。お年よりの為に温泉のお湯を配るボランティアをするなど、とてもいい人だ。山田町を良くする為にと、本当に頑張っている。僕は今まで公務員というとやる気のない区役所の職員や郵便局の職員しか見たことがなかったのであまりいい印象はなかったのだが、そんな自分を恥じ、またおじさんの息子である僕の友人がなぜ公務員になりたいというのも納得した。僕もいつか、このおじさんのように やり甲斐のある仕事をしたいと思う。

することがない僕に気を使って、おじさんは僕を車で山田町温泉に連れていってくれた。 20年以上役場で働いているおじさんは町の人と殆ど知り合いらしく、至る所で立ち止まっては、挨拶していた。 どうだ、「こんどるじゃろ」と言われたが、新宿育ちの僕としてはむしろ空いているように見えた。

温泉とサウナから出て、うどんをおごって もらった。「うまいじゃろ」というが、なるほどいい味!ビールも持ってきてくれたが、僕はお酒が飲めないわけで、当然中ジョッキなんか生まれてから飲んだことがないし、 飲んだら今日一日苦しむ事は目に見えていた為、せっかくだが断った。その後も、おじさんは優しく僕の為にいろいろ話してくれた。

家に帰ると、丁度友人が着替えに帰ってきた。白い袴を来た彼は随分気分が回復しているようだった。そのままご両親と、おばさん、おばあさんと、下の妹さんと一緒に記念写真を取った。ところで、どうやら家の中で僕は下の妹さんの場所を占領して寝ているらしかった。この子は無口だし、控え目なのでちっとも話が出来なかったので知らなかったが、悪いことをしてしまった。

予定通り、友人は、着替えてすぐに出ていってしまった。僕の相手が出来ずに すまなそうであったが、気にせず楽しんできてくれといっておいた。もともと強引に押し掛けたのだから、無理も無い事だった。

暫くしてお好み焼きが用意された。うどんを食べたばかりの僕は余り空腹ではなかったので、山のように用意されたお好み焼きのもとを かなり余らせてしまった。おばさんが「ずいぶん小食でいらっしゃるのね!」とすこし物足りなそうに笑った。

僕の体は小さくはないので沢山を食べると見越して作った量であったようだが、特に最近ものを食べていないので胃の縮まっている 僕は期待に応えられず、残念。

 

犬と山田町


僕は家の周りを散歩してみた。

・・・田舎だ。牛もすぐ裏にいる。周りは、畑。空気はさわやかで、とても静かなところだ。隣の家の小犬が、綱が絡まって動けなくなっていたので勝手に庭に入って絡まった綱をほどいてやった。そんなことをして散歩修了。友人の家に戻った。

僕は、ご両親からのいいつけ?で、一人で友人の家の犬の散歩に出かけた。

友人の家の犬は、なかなか言う事を聞かない。うちの犬は誰もしつけしていないと言っていたが、そのせいか確かに余りにも言う事を聞かないので、途中で何度も立ち止まって、叱ったり誉めたりした。

ここで、問題発生!

進んでいると、途中で何と綱がほどけてしまい、犬が遠くへ走っていってしまったのだ。ひえー!なんてことだ・・・よそ様の犬が僕の散歩中に逃げ出してしまった!捕まえなくては。落ち着け。基本的に、犬は追いかけられると逃げるだけだ。そう思い、僕は逆にぷいと反対を向き、ダッシュした。案の定、犬は遠くからくるりと方向転換し、僕を追いかけてきた。然しそのまま僕を追い抜いて行こうとしたので、「こっちに来い!」と大きな声で叱った。すると犬は僕の足元でぴたりと 座り込んだので、その隙に首輪を付けた。

家に帰ると、よくあの犬が言う事を聞きましたねと驚いていた。うちも犬を飼っていてよかった・・・。そのあと、ご両親は僕を何処かへ連れていってやろうとおっしゃった。

そして3人で車で「かかし館」を見た。大きなかかしの下には「かかしの里 山田町」と書かれていた。そのかかしの足元に、タイムカプセルが埋めてあるらしい。中にはおじさんが息子である友人にあてたメッセージもあるという。良い話だなあー。

その後、町に新しく出来たプールなどを見せてもらった。ここだけの話、東京に住む僕にとって近所にプールができたことなど珍しくも何とも無いわけだけど、こういう田舎町でおおきなプールができたということはこちらの人にはとってもうれしいことなんだろうなあ、としみじみおもいながら、家に帰った。

 

山田町の夜


ご両親は本当に僕をよくかまってくれる。本当に有り難く、勿体無い事だ。僕の家との違いは、うち親は僕の為に車で送ってくれたりという事は殆ど無い。それはそれでいいんだけど。

しかし、こちらのご両親は、進んで何処へ行くにもついていってあげたりと、本当によく世話をしている。これは、甘やかすとか過保護であると いう事とはまた別の事のようである。誰にでも親切らしい。

夜、おばさんがラーメンを買ってきてくれた。ここまで出前してくれないからと、わざわざ取りに行ってくださったとのこと・・・。しかも、ここに運ぶまでにのびない様にと硬めにゆでてもらったと言う。その気遣いが、本当に嬉しい。

おばさんは、「山田町は本当に何も無い所で」とおっしゃったが、 自然にあふれていて、とても美しい。人々も親切で暖かく、ご両親も他人である僕をこんなに可愛がってくれる。

十分来た甲斐があった。そのまま3人でこたつに入り、ほのぼのとテレビを見て夜を過ごした。

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