古巣のCEO

今日は、久々に日記っぽいことを書いてみようと思います。

僕がビジネススクールを卒業してすぐに入ったスタートアップのCEOのRudyのところに遊びに行った。彼は今はVenture Debtという投資アセットを扱う、要するにベンチャーキャピタルみたいな投資会社にいて、パートナーとして成功している。もともと彼はシリアル・アントレプレナーだが、40を過ぎて「ベンチャーというのは20代とかの若いやつじゃないとできないからね」ということで、投資側に回ったのだという。

ちなみに、僕らが一緒にやったスタートアップはscanRというモバイルサービス会社。その時の思い出話に花が咲いた。(今は色々ピボット(方針転換)をし、Flint Mobileという決済系のビジネスをやっている。)

結局scanRは失敗したわけだが、今思えば「早すぎた」の一言に尽きる。まだスマートフォンもあまり使われておらず、モバイルの性能もかなり低い時期にEvernoteみたいな事をやるのは早すぎたんだと思う。それで2008年~2009年のサブプライム危機の影響でスタートアップがばたばた倒れている時、主要なビジネスメンバーはレイオフになった。当時、従業員をレイオフしなければならなかった彼のマネジメントは本当に上手だったと思う。彼は当時の投資家だったBill Millerというベンチャーキャピタルのパートナーにこう言われたのだという。「これからの2週間が、お前が回りにどのように覚えられているかを決める。誠実で、正直で、透明であれ」と。Rudyはまさにそれをこなして、その「失敗」の手腕が高く評価されて、scanRの投資家だった会社にパートナーとして迎え入れられたというわけだ。

他にも色々話したのだが、面白かったのは奥さんの話。僕が「シリアルアントレプレナーと、奥さんってどんなカンジの関係なの?」と聞いたからなんだけど。彼曰く、「スタートアップの人生は、昨日は最高の気分だったのに今日は最悪の気分で、でも明日にはまた最高の気分だったりして、ジェットコースターみたいでしょ。最初の頃は、俺が細かくビジネスがどうなってるか説明するから、彼女も色々聞いてきて、一緒に一喜一憂していたから、彼女もストレスがあって大変だったと思う。でもそれがずっと続くと麻痺してきて、「ああそうなの、今日はあんまりいい日じゃなかったね。じゃあ今日は外食でも行こうよ」みたいなカンジになってきて、細かいことは聞いてこなくなった。ずっとサポーティブなんだけど、アップダウンは慣れてくるといちいち気にしなくなるよね。」そんな話を聞いていると、第一線で戦うシリアルアントレプレナーを支える奥さんってスゴイなあと思った。

ところで、ビジネスメンバーはほとんどレイオフになったと書いたが、彼らが今どうしているかというと、みんなもその後それぞれに成功しているので、まあ今思い返せばノーダメージなんだよね。塞翁が馬と言いますか。そもそも当時レイオフになった側もわりとケロッとしてたし、レイオフになった程度で困るようなやつはそもそもスタートアップにはあまりいないというだけなんだと思うけど。

にしても、僕がシリコンバレーを離れたのはたった数年なのに、色々なことがすごい速度で進んでいて面白い。

愛の日記

先に言っておきますが、読んでも何の足しにもならない話をします。

「愛の日記」というタイトルは、昔持ってたネタ帳の名前で、ネタ帳の延長でブログを書いている。まあ、めったに更新しないから、書いているというほど書いてないけど。

以前は自分で書いたプログラムを動かす用に置いてた自宅のLinuxのサーバーをブログにしてたのだが、今ではパッチとか当てるのが面倒でレンタルサーバーにした。だから毎月お金を払っている。アクセスが増えるとサーバー代が上がるが広告収入はゼロなので赤字にしかならない。そんなこともあってブログのタイトルはアクセスが集まらないようなタイトルにしているし、「ブログを成功させるコツ」みたいな方法の逆をするようにしている。

昔は家族や友人向けのつもりで書いていたんだけど、いつの間にかアクセスが増えまくってプライベートな事がかけなくなって、過去のブログの大半は消した。

投資ファンドというのは極めて機密性が高い仕事なのもあって仕事に直接関わる事は言えない。仕事の事がかけないんだからアクセスが増えても仕事上のメリットは無い。

記事掲載を依頼されると断る事について「もったいない」といわれるが、僕は自分の事をブロガーだと思ってないし、ブロガーとして認められたいとも思わない。

特に書きたいことも無い。講演とか頼まれるといつも困るのは伝えたい事とかあまりないからだ。ブログの中身は「よく聞かれること」に対する答えを書いているだけで、そもそも僕が言いたい事なわけではない。

というわけで、タイトルは単なるジョーク、アクセスが増えれば損をする、仕事上のメリットすらない意味不明なブログが、この「愛の日記」である。

「自分へのメリット」らしきものがないのになぜ書くのかと聞かれる。

僕はできるだけ、僕が知りもしないあなたが笑ったり、元気になったりして欲しいと思って書いているが、最終的には僕は自分のためにブログを書いている。そしてこの、ロクに更新しないダメブログを持っていて本当に良かったと思っている。

日本を離れて長い時間が経ち、家族や友人とも昔のように深い付き合いはできなくなり、みんなが知っている日本のニュースも知らなかったりして、日本とのつながりが薄くなっていることは疑いようがない。それは、僕にとってはとてもさびしいことなのだ。僕が路頭に迷った時に、帰る場所はあるのだろうかと思うのだ。それでも、日本に帰ると、ブログのおかげで会いたいと言ってくれる人がたくさんいる。

日本にいる時、「夜が空いたので誰か一緒にごはんでもしますか」とお昼に書いたら、とても飲み屋の部屋が取れないぐらいの人数が来てくれた。お茶会でもしましょうと事前にいえば数百人が応募してくれるし、わざわざ遠くから飛行機でほんの一瞬の会話のために会いに来てくれた人もいたよね。現実的にはほとんどの人には会えないし、ほとんどの人には全然時間を使えなくて、申し訳ないと思うが、ありがたい事だと思う。

ちなみに、僕は「こういう人」というタグらしきものがないせいか、来る人の年齢も性別もバラバラで、会ってする話もバラバラで、それぞれの皆さんが何で僕に会いに来るのかすら全然わからない。

ただ、僕にとっては、理由はともかく「話を聞いて欲しいと思ってくれる人がいる」というだけで、とても幸せな事なのだ。だから僕はこの空気一つ読めないポンコツ人間である僕の話を聞いてくれる人にとても感謝しているし、頼られる事で支えられていると思う。こうやって何かを書いた結果、理由もわからないけどとにかく自分を信頼してくれる人が地球の裏にいるというのは、すごく幸せな事だと思わない?想像しにくいかもしれないけれども、僕はそれはとても恵まれた生き方だと思うのだ。だから僕は、このブログを通して繋がった人にとても感謝している。なんか自分が立っている場所がそこにある気がする。いや、そんな事言っておいてほとんどミーティングリクエストには応える余裕がないんだけど。ごめんなさい。

ただ、僕が広告を入れないのは、皆さんに感謝しているからである。そして、読んでくれる皆さんから何かを受け取った時点で僕はいろんな事を勘違いするダメ人間だから入れないのである。収入があったらそれが重要な指標だと脳が勘違いしちゃう気がするんだよね。だから、基本的に僕がお金を払って、読んで頂く側であるべきだと思っているのだ。

というわけで、今月のサーバー代も赤字なんです奥さんごめんなさい、と、そういう話です。ほら、読んでも足しにならないでしょ?笑

でも、読んで頂いてありがとうございます。