それ本当にやりたいの?

「こういう仕事がやりたいのだが、どうすればよいか」というアドバイスを求められた時、やりたいと言っている事に関して行動が伴っていない人が多い。そしてこういう人の特徴は、「今やっていることがやりたくない」ということだ。本当は「これがやりたい」ではなく「これならやりたくなくないかもしれない」という希望なのだと思う。でも「やりたい仕事」がどんな仕事なのかという現実に興味があるわけではないので、行動は伴わない。

これはとても怖い事だと思うから、ちょっと書いてみる。

あくまで例だが、「どうしても保母さんになりたい」といっていた人が、保母さんになって1年後に「やっぱり保母さんなんて全然やりたくなかった、実はエジプトで考古学者をやりたいと思っているが、アドバイスが欲しい」と言ってきたら、あなたはどう思うだろうか?「あまりに違う選択肢だけど、本当かな」とは思うだろうか?僕は、その時点では「本人の中ではつながっているのかもしれないし、実際にやりたいのかも」と思うけど、もし実は本人がそれをやりたくない場合はアドバイスする事自体が無意味なので、一応本当なのか確認することにしている。

こういうとき、「なぜエジプトで考古学者なのか」を聞いても無駄なので「エジプトの考古学に関し、具体的に何をした事があるのか」を聞く。つまり、こういう事を聞いてみる。「今、仲の良いエジプトの考古学者はどれぐらいいて、彼らとどれぐらい会っているのか。考古学じゃなくても、海外で研究する人たちとどんな交流をしているのか。今は考古学者でなくとも、過去にどれぐらい自分で自発的に考古学を研究したり勉強会やセミナーに参加したりしたのか。というかせめて言語は大丈夫なのか。というかエジプトに行ったことぐらいはあるのか。というかせめて海外に行った事はあるのか。」など。そして多くの場合で、そんなに大きな方針転換の話をしているのに、直接的にも間接的にも、動いた形跡が無かったりするのだ。

そもそも、「何かがやりたい」と話をされた時に、「なぜやりたいのか」なんてことは、いくらでも自己洗脳してでっちあげることはできるので聞くだけ無駄だと思う。一方で、「関連することで、実際過去に何をしたのか」はでっちあげることはできない。そして、「どうしてもやりたいけど実際に関係することに努力をしたことはほとんどありません、でもどうしてもやりたいんです」なんてことはどう考えても不自然なのだ。「経験が情熱を生む」でも書いたが、やった事が無い事に情熱なんてフツー生まれないし、そんな話は「この食べ物が大好きなのでどうしても食べたいんです、食べたこと無いけどネ!」というのと同じぐらいヘンだ。

にも関わらず、なんで多大な努力が求められるような目標を立てるような覚悟が生まれるのだろう?その情熱はどこから来るのだろう?それは、今やってることが半端ではなく嫌だというネガティブな情熱があるからじゃないだろうか。だから、「ぜんぜんやったことがない、よくわからないものであれば、嫌ではないかもしれない」という逃避のための希望を見出そうとしてしまう。そして行動が伴っていないのは、「やりたい」はずの事に対して、大して情熱も興味もない証拠である。

しかしこういう形で意思決定するのは不幸になっていくリスクがとても高い。嫌なことから逃避はできるかもしれないが、そもそも「半端ではなく嫌なことを、やりたいことだと勘違いした」という前科があるのだから、次も同様に半端ではなく嫌になるかもしれない。半端ではなく嫌なことをして生きていくのはつらい。

「自分が一生やりたい仕事」でも同じようなことを書いたけど、やりたいことなんて、わからない人にはなかなかわからない。だからお勧めなのは、よくわからないなら壮大な目標を立てないことだと思う。なぜなら、「それがやりたいかどうか」を検証するのにかかる時間が長くなるので、やりたくなかったときに人生の無駄が痛いからだ。例えば千里の道の3歩目ぐらいで嫌になるならば大して千里も進みたいと思ってないのだと思うし、嫌なのに五百里ぐらいまで無理して進むから半端ではなく嫌になるのだと思うし、それで10年かけて千里進んでやっぱり死ぬほど嫌だったでは目も当てられないわけで・・・。

だから、まずそれよりもっと小さい目標を立てて、色々な経験をつみながら軌道修正していって、本当に情熱が沸くものがあればポジティブな情熱を投入するほうが、とても自然な生き方だと思うよ。「会社の幸せと個人の幸せ」で、転職するのは自然と書いたけれども、ネガティブな情熱で安易に転職していいという意味には捉えないで欲しいというのもあって、今回はこのお話を書いてみました。

どうでもいいけど、昔の記事にいくつかリンクすると、なんか過去の資産で食ってるみたいでなんかイケテナイ気分になります(そして一円も食えてはいない 笑)。

さらにおまけ: 以前、「MBAの志望動機に嘘を書いて、面白くしたほうが合格しやすいか」という質問を受けた。正直な質問ですばらしい。ただ、人の話を聞きなれている人というのは、「あんた本当はそれやりたくないでしょ」というのを簡単に見抜ける気がする。「やりたい」という嘘は、これまで書いた様に本人が意識していなくても、意識して嘘を隠そうとしても、過去の行動を聞けばすぐばれると思うよ。僕もよく仕事柄、MBAの学生とかから「アメリカのベンチャーキャピタルで働きたいんです!」とか言われる。過去にやってきたことを聞くと、それが嘘なのは正直わかってしまう。(本当は日本でインターンしたくないからアメリカで何でもいいからやりたいんです、と最初から言ってくれれば、もっといいアドバイスできるのにな・・・)と悲しく思いつつ、先方も僕に「すみません嘘でした」とははっきり言えないだろうから、やんわりと話を本人のためになる方向に持っていく努力をするんだけど、まあ、こちらもさすがにかなり慣れているので、わかってます。

5 replies
  1. 大学4年生
    大学4年生 says:

    こんにちは。
    自分はいわゆる壮大な目標をたててしまいがちな面がありますが、
    小さな目標をどんどんこなしていくと共に色々な経験を積んで自分が
    ”これだ!!!”となれるものを見つけていきたいと思います。

    話がかわるのですが、古賀さんの交換留学(U O)の時の話をお聞きしたいです。私は現在U Oに交 換留 学中で、後1週間で授業がおわり帰国です。具体的に留 学していた時にしていたことなどお聞きしたいです。
    周りを気にしない、と決めて留学をスタートさせました。ですが、最近になって自分はこの交 換留 学(9ヶ月)で何がしかの”結果”を出せたのかどうか、周りはビジネスコンテストに参加して優勝しようと一生懸命になったり、団体(JSO等。覚えていらっしゃいますか)に参加して主催イベントを成功させようと、何がしかの”結果”につながる行動をしている場面をみて少し焦りを感じています。
    おそらく”小さな目標をたててこなしていった” や”たくさんの経験” という意味ではおそらく自分が今思ってる以上にできたことはあると思います。(まだ帰国前なので振り返る時間があまりありませんが) ですが”結果”という意味では果たして何ができたのだろうか、と頭を抱えてしまいます。


    古賀さんにUOでどういうことをしたのかお聞きしたいのは興味とか好奇心など含めて単純に”知りたい”という気持ちからです。また、交 換 留 学して得たもの(主に精神面)が帰国されてからの古 賀 さんの考え方や行動に何か影響しましたか。

    長々となりましたが、ぜひお話伺えるととても嬉しいです。
    Go Ducks!!!

    Reply
  2. yokichi
    yokichi says:

    > 大学四年生さん

    んー、同じUOに行っている人にエラソーお話するほど何も特別なことはしてないし、精神面で何か変わったというほどのことはないですが、とりあえずわかったのは、9ヶ月では何もわからん、ということでした 笑

    そしてもう一回留学しました。

    Reply
  3. 法学部の後輩
    法学部の後輩 says:

    初めまして、私大学の後輩です。
    ブックマークに入れて愛読させていただいてます!

    早速ですが質問させてください。
    今回の記事を見て、まさに現在の自分の心境を言い当てられているようで冷や汗がでました。とても考えさせられる内容でした。

    そこでなんですが、古賀さん自身のこういった「進退を決める」みたいな経験はどのような時になるのでしょうか?自分の決めた道からネガティブに外れそうになった経験と言いますか。

    もし、私のチェック不足で過去にそのような内容のエントリーがあるのであれば、お手数ですが教えて頂ければと思います。


    Reply
  4. 大学四年生
    大学四年生 says:

    返信ありがとうございます。
    なるほど、ちなみにその”もう1回留学した”とおっしゃっているのは、
    MBA留学のことですか?

    Reply
  5. yokichi
    yokichi says:

    法学部の後輩さん

    いやー、僕はわりとやりたいことがはっきりしているので、ネガティブに道を外れたのは会社をクビになった時ぐらいで、外部的要因によるものだけです。それ以外は、やりたいことをやっていたら自然と決まっています。

    大学四年生さん

    経歴を見ていただければわかるとおり、その通りです。

    Reply

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